興信所の身元調査とは
興信所の調査業務において古くからあるもののひとつが「身元調査」です。
昭和初期には「ある身元調査」の需要が多く、とても流行っていました。
以前の「ある身元調査」とは「血統調査」「家柄調査」とも言われ、結婚や採用時に利用されていたということなのです。
それこそ全国民に苗字が与えられ、戸籍ができた明治初期にまで、時には江戸時代にまで遡り、どういった家柄の出身者であるのかを精査する調査でした。
日本では江戸時代において士農工商という身分制度があり、その身分制度にも入れない人たちを非人、エタなどと呼び、忌み嫌い、隔離していました。
明治時代に入り、一部の爵位を持つ華族を除き全ての人が平民となりましたが、この非人やエタの人たちは新平民と呼ばれ、差別は続いていたのです。
昭和初期においてもその差別は続き、結婚や就職などにその新平民と縁戚や社員となることを忌み嫌い、興信所に身元調査を依頼していたのです。
しかし、太平洋戦争後の新憲法により人権が認められ、差別をやめるようになったとのことですが、長年培ってきた差別意識は残り、今でも地域によっては差別意識が強く残っているところもあります。
また以前に中国人、朝鮮人など日本に帰化した在日外国人の真偽確認することを目的としたやはり差別的な身元調査が多く実施されていたのです。
この差別に繋がる身元調査はいずれも地方の府県条例で禁止するところは多くなり、平成19年に施行された探偵業法で正式に差別に関する調査は禁止となりました。
ただ興信所が手掛ける身元調査は、差別に関する調査ばかりではありません。
よく地方の役所や法務局などに赴くと「身元調査はやめよう」というポスターや地域によっては看板などが立てられています。
興信所に言わせれば、もともと家柄や血統を調べることばかりでなく、本名や居住先、実家や兄弟関係などを調べる事も身元調査なのです。
例えば、浮気調査によって浮気相手が特定されましたが、浮気相手について氏名や住所がわからない場合。
これでは慰謝料の請求すら出来なくなってしまいます。
また身元調査によって氏名や住所は特定できたものの年齢が分からず、別の調査を実施した結果、大学1年生と判明したのです。
未成年ですから親についても氏名や現住所を調べなければなりません。
これも身元調査なのです。
最近ではインターネットのSNSなどで知り合った人の中には本名や住所を教えないまま友人関係を構築していく人も増えています。
仮名であったり住所も知らない人と友人となれるのかについての疑問も残りますが、現実問題として多く存在している世の中となっています。
それだけSNSでの文章のやり取りや携帯電話の会話だけで成り立ってしまうのです。
そんな人の中には最初から悪意を持って近づいて来る人も存在します。
金品を騙して詐取するネット詐欺や結婚詐欺、体の関係を目的に接する風俗関係やそれこそ暴力団などの反社会勢力関係者などなどです。
いざトラブルが起こっても相手が仮名であったり、聞かされていた住所も出鱈目であったりしたらどうしますか?
泣き寝入りしてしまいますか?
少額な被害であればそれでもよいでしょう。
しかし、多額な被害が生じたり、精神的や身体的にも被害を被った場合、そうは言ってはおられません。
民事事件や刑事事件として訴えることも考えなくてはなりません。
しかし、相手の身元が不明では訴訟も何も起こせないことになってきます。
そのような時こそ興信所の身元調査がお役に立つのです。特に最近ではこのようなケースを起因とする身元調査の依頼が多く寄せられています。
身元を確認しなくても交流、交際が可能な世の中となった現代、交友関係や交際に発展する前に身元を確認しておくことが重要視されてきており、興信所の身元調査が見直されているのです。